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Letus35 Extreme奮闘記 VOL.1 〜出会い篇〜
面白いアイテムなのですが、使いこなしは大変・・

■このページの記載内容は、2008年5月当時のものです■

Letus35 Extremeとの出会い

The Letter ポスター
小川亮輔監督作品
「The Letter」

2008年3月、経済産業省による洞爺湖サミット向け短編映画を撮影することになり、小川監督の提案によりフィルム用レンズを用いることが決定しました。

その頃、P+S TECHNIKのMini35などフィルム用レンズを小型ビデオカメラに取り付けるアダプタをレンタルしている業者が札幌に見当たらず、監督がいろいろ調べてくれて、東京の業者からKINOMATIKのMOVIEtubeSTという製品を借りることになりました。

ところが、小川監督が某プロデューサ氏と話をしていて、偶然、札幌の某制作会社にて「レタス」というアダプタを購入したという情報を入手。

Letus35Extreme(以下Letus35と表記)といえば、数年前から海外のメーカーで手作りで製造・販売されており、価格は数百ドルと他の35mmレンズアダプタに比べて非常に廉価だということがネット上の掲示板でやりとりされていました。最近では明るさが改善され(スペック上はmini35より明るい)、プリズムを内蔵して映像も反転しないなど、だいぶ良い出来になっていたものです。

Letus35 Extremeのしくみ

Letus35は、35mm一眼レフ用レンズ(以下SLRレンズと表記)をビデオカメラに取り付けるためのアダプタです。SLRレンズによりLetus35内部のすりガラス(Ground Glass、以下GGと表記)に上下反転した像が結ばれ、その像をクローズアップレンズ越しにビデオカメラで再撮影する仕組みです。

ただ再撮影するだけでは、GGの粒子が見えてしまいますし、像も上下反転したままです。そこで、GGを高速で振動させ、粒子を"ぶれ"により目立たなくし、プリズムで正像に戻します。

Letus35初使用

The Letter 撮影風景
音楽室に組まれたセット

撮影前日の夕方にLetus35一式をお借りして、セットを組んでいる現場へ直行。非常に限られた時間で様々な状況を想定してのテスト。
だいぶ以前からウェブサイトで情報を入手していたので、特に問題無くテスト終了。

そして撮影本番。1日目は室内セット撮影。400Wのキノフロ1灯と、太陽という設定の575WのHMI(セットの窓の外側から照射)1灯がメインの光。
500Wのミニフォーカシングライトを、ろうそく光の演出など補助的に使用。

照明部を組まなかったので、かなりコンパクトな装備。カメラ側、レンズ側ともに絞りは開放。Letus35を使用するには、ギリギリの光量でした。

撮影2日目は屋外。

早朝の撮影準備中、不具合が発生。GGの振動が安定せず、撮影した映像にGGの粒子が写ってしまうという状況(後に初期不良品であったことが判明)。

The Letter 撮影風景
室蘭での撮影風景

「Letus35を使わない」と「GGの粒子が写ってしまうことを許容する」という究極の2択。たいていは「Letus35を使わない」という選択が正解なのですが、監督の演出プランや編集でどのように加工するか等事前に綿密に打ち合わせていたため、「粒子が写ってしまうことを許容する」という方向で大丈夫であると判断。

その他、運搬中の事故で1本レンズが使用できなくなってしまったり、その他の機材にも故障が発生する等の問題が起きたものの、収録自体は問題なく終えることができました。

 

作品完成 そしてLetus35購入決断

夕張上映会場
上映会場のホテルシューパロ

撮影前から決まっていた映像のトーンのひとつが、"高感度のフィルムで撮影したようなざらつき"というもの。そのため、編集時にフィルムグレイン風の動的ノイズを追加することで、Letusの固定パターン状の粒状感を緩和。

あとは、マスクやブラー等を用いて、心理的に粒状感が気にならないように調整。

いろいろあったものの、作品は良いものに仕上がり、無事納品。「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008」開催に併せて行われた「地域映像コンテンツ創造セミナー in ゆうばり」にて上映されました。

上映当日。送迎バスに乗り込み、会場到着。会場ではプロジェクターの調整をPowerPoint資料を表示するパソコン画面向けにしていたようで、ビデオ上映には最低の条件。灰色っぽいはずの場面が真っ黒になっていたので、およそ10IRE以下が全滅している様子。

上映機材のセッティングをしていた業者さんにしつこくお願いして、なんとかカラーバーがまともに見えるまで調整してもらい(各調整をデフォルトに戻してもらったようなものですが)、本番。

夕張で上映
セミナー本番前のテスト上映

小規模な映画祭など映像や音声の再生条件が劣悪なことは稀ではありませんが、最低でもカラーバーが正しく再現されるように調整してもらいたいものです。

札幌の島田英二監督、韓国のキム・ギウン監督の作品とともに、無事、上映が終了。キム・ギウン監督は、これから撮る長編映画で出したい色調と「The Letter」の色調がぴったりだったという事で、編集、特にカラーコレクションについて詳しく聞かれました。

そんなこんなで初めてのLetus35による撮影は、結果的に成功を収めました。

折しも円高であり、海外からの個人輸入に有利な状況だったので、Letus35の購入を決断。レンズは中古価格が手頃なCanonFDマウントを選択しました。

 

納品

The Letter 撮影風景
遂にLetus35Extreme到着!

注文してから届くまでの間に、Letusの販売Webサイトに新たにHVX200用の「Camera Optimization kit」なるものが登場。つたない英文で問い合わせたところ、「199ドル払えば変更できるよ」、と返事が返ってきたので、ついでにその他の注文内容も変更して差額を送金。

「Camera Optimization kit」はアクロマットレンズ(色消しレンズ)になっているとのことなので、画質(色収差など)が向上しているはず。

 

難関・・


Letus35スクリーン面

納品後、早速試用してみたところ、バックフォーカスがずれていることが判明。英語で書かれた説明書をつたない読解力で読み、どうやらLetusのフランジバック調整は、オーバーインフの修正はできるもののインフにたどり着かない場合は修正できなさそうだということを確認(すりガラス面とレンズ後玉の距離を離す方向にしか調整できない)。

実は、きちんと調整する方法があるのですが、このときはまだその方法を知らず・・。

ネジ4本を付属のレンチで外すと、簡単にスクリーン面にアクセスできます。メンテナンス性は良さそうです。

借り物を分解するのは御法度ですが、自分のものなら自己責任で分解できますので、3月の撮影時のようなトラブルがあってもある程度は現場で修理できそうです。

ひとまずLetus35を組み立てなおし、明るいうちに屋外の映像を撮ってこようと、会社から徒歩数分の河川敷へ。無限遠にピントを合わせているのに、映像のピントは手前の木の枝に合っているという悲しい現実。


フォーカスを∞にしているのに、手前の木にフォーカスがきている。NFD50mmF1.4

 

ほとほと困り果て、仕方なくレンズ側で修正する事に。繰り返しますが、Letus35はフランジバックを調整できる仕組みになっているのですが、このときはその方法を知らなかったのです・・。

50mm、35mmのレンズは簡単に分解・調整できたのですが、その他のレンズは難易度が高く分解不可・・・。


レンズの前玉枠を外す

窓の外を撮影し、無限遠の調整

 

ここで、もう一度Letus35を観察。レンズマウント取り付け部も塗装されているのですが、それを削れば少しフランジバックが短くなるのでは・・、ということで、カッターで削り取り。


Letusの塗装を削る

レンズマウントの塗装も削る

 

すると、さっきまで無限遠の出なかったレンズが、見事に無限遠にピントが合いました。50mmと35mmは再び分解して元に戻しました。


HVX200窓越しの映像。無限遠が出るようになった。 canonFD 85mmF1.8

 

結局、とても遠回りしたものの無事使えるようになり、おかげでLetus内部を見る事ができてレンズの分解も経験できて、勉強にはなりました。

その後、Letus35Extremeのサイトにて詳しい取扱説明書が公開され、そこに正しいフランジバック調整の方法が掲載されています。

>>NEXT 「Letus35Extreme備忘録VOL.1


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